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【夫婦が離婚するエンディング】
02 さようなら
デイヴィスの執務室から出た私は、自室へと向かった。
『離婚はしない』と伝えてからのデイヴィスは、彼なりに一生懸命、私に気を遣ってくれていることはわかっていた。
(资料图)
契約を守ってくれるし、今までの態度を改め、私に丁寧な対応を心がけてくれている。
だからこそ、私はデイヴィスに、今の私の悩みを相談しようと思った。
そのときの私は、『もしかすると、今の彼なら、私に協力してくれるかもしれない』と期待してしまったのだ。
その結果、デイヴィスから返ってきた答えに、私は深く傷つき、自分がどれほどおろかなのかを再確認することになった。
――私とあなたの間に生まれた子どもは、幸せになれるかしら?
いつかの疑問の答えが、たった今、私の中で出た。
私は、デイヴィスとの間にできた子どもを愛することはできない。
今なら少しの迷いもなく、彼と離婚したいと言い切れる。そして、事業もうまくいっているので、贅沢さえしなければ、実家を頼らなくても、住む場所や当面の暮らしに困ることはない。
でも、この国で五年たっていない夫婦が離婚することは難しい。どちらかに致命的な過失でもない限りなかなか認められることはない。
「だったら、こちらから、離婚を申請できるような理由をつくるしかないわね……」
それからの私の行動は早かった。
公爵夫人のマチルダに相談して、信頼できる医者を紹介してもらった。
その医者に、『私は子どもができない身体だ』とウソの診断書を書いてもらう。
この診断書を行政機関に持ちこみ、『伯爵夫人の役目が果たせない。優しい夫に迷惑をかけている、もうどうしたらいいのかわからない』と涙ながらに何度も何度も相談した。
その結果、離婚を決めてから行動しはじめたひとつき後には『妻の訴えは、離婚理由に値する』と国から正式な許可をもらった。
これなら、デイヴィスは『伯爵夫人の役目をはたせない妻にも優しかった立派な夫』で、私は『夫と伯爵家の将来のために自ら身を引いた優しい妻』になれる。
私が妊娠できないというウワサがたつだけで、それ以外にだれも傷つけない私が思いつく最善の方法だった。
この離婚理由なら、私の実家と伯爵家ももめることはないはず。
私は、正式に発行された書面をもって、デイヴィスの執務室へ訪れた。
デイヴィスは「ローザ、いらっしゃい」と満面の笑みで迎え入れてくれる。
私も満面の笑みをデイヴィスに返した。
「デイヴィス、私たち、離婚しましょう」
何を言われたのかわからないようで、デイヴィスは、ポカンと口を開けた。
「は? 何を言って……?」「もう決めたの。ここにサインしてね」
書面を差し出すと、デイヴィスは怒りでブルブルと震えだした。
「ローザ、どういうことだい!?」「だから、こういうことなの。何度だっていうわ。私たち、離婚しましょう」
「でも、離婚はしないって……」「気が変わったの。ほら、あなたもよく気が変わるじゃない?」
ニコリと微笑みかえると、デイヴィスは青ざめる。
「そんな、こんなに君を愛しているのに、どうして!?」「それは……私があなたをもう愛していないからよ」
カッと目を見開いたデイヴィスは、大きく右手をふり上げた。叩かれると思った私は目をつぶったけど、いつまでたっても痛みはこない。
おそるおそる目を開けると、振り上げた手を強くにぎりしめながら、デイヴィスは静かに涙を流していた。
「もう……無理なの? どうにもならないの?」「ええ、もう、どうにもならないわ」
「うっくっ」
悲しみに暮れるデイヴィスを見ても、何も感じない。可哀想だとも、慰めてあげたいとも思わない。
「僕は、サインしたくない!」
私は書面を回収すると、ため息をついた。
「じゃあ、次は法廷で会いましょう」
いつかのデイヴィスがリンデンに向かって言った言葉を、私はわざとくり返した。
ガクッと床に膝をついたデイヴィスは、「……もう、本当にムリなの?」とつぶやいている。私は、涙でぬれるデイヴィスの瞳をまっすぐに見つめた。
「そうよ。もう、本当に、ムリなの」
それからしばらくすすり泣いていたデイヴィスを気長にまっていると、彼は投げやりに書類にサインした。この書類を行政に提出すれば、彼とようやく他人になれる。
「ローザ、最後に教えてよ。……僕の何がダメだったの?」
そう聞かれても、もう教えてあげる義理はない。これからは、彼と向き合う努力をしなくていいと思うと、心が晴れやかだった。
「わからないわ。離婚なんて、どちらかの問題ではないでしょう? あなたと私は合わなかった。ただ、それだけよ」
嬉しくなった私は、書類を胸に抱えて、デイヴィスの執務室から飛び出した。窓から降り注ぐ光がこれからの私を祝福してくれるようだ。
「さぁ、何からしようかしら?」
私のはずむような声は、青い空に吸い込まれていった。